2020年4月に始まった給付奨学金の支援を受けると、併用して支給される無利息奨学金には調整があります。
まずは日本学生支援機構(正式名称:独立行政法人日本学生支援機構)の「貸与奨学金」について解説します。
「貸与」というだけあって、将来にわたって「返済」する必要があります。
日本学生支援機構の貸与奨学金には2種類あります。
「第一種奨学金」(以下、無利息奨学金と言います。)
「第二種奨学金」(以下、利息付奨学金と言います。)
本記事のテーマである無利息奨学金は第一種奨学金になります。
大学の授業料は高いけど、無利息で奨学金が借りられるなら安心だね!
奨学金を借りるには基準と限度額がありますよ。
前回の記事で書いた、2020年4月から開始した高等教育の修学支援新制度(以下、給付奨学金と言います。)と併用して支援を受けることも出来ますが、調整があります。
給付奨学金の支給条件や支給額については、こちらの記事を是非ご覧ください。
給付奨学金の支援と無利息奨学金の併用における調整について真っ先に知りたい方は、目次を表示させて「給付奨学金と無利息奨学金の併用」からご覧ください。
よろしくお願いします。
奨学金に関するアンケート
まずは、労働者福祉中央協議会の「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」の結果から見てみます。
奨学金制度の利用状況
個人的には7~8割くらい利用していると思っていたので、意外に少ない印象です。
当時は日本育英会でしたが、私も奨学金を利用していました。
利用していた奨学金の種類
利用していた奨学金の種類は、当時の日本育英会を含めた日本学生支援機構の奨学金が、約86%で圧倒的に高いです。
私は日本育英会の有利子奨学金を利用していました。
奨学金の借入総額・毎月の返済額・返済期間
それぞれの平均は下記のとおりです。
借入総額の平均324.3万円
毎月の返済額の平均16,880円
返済期間の平均14.7年
22歳の大学新卒で働き始めたとして、37歳くらいまでにようやく返済が終わるイメージです。
私は22歳で就職して返済を始めましたが10年くらい経過した時に一括返済をしました。
毎月の返済は気になるものでしたね。
貸与奨学金について
奨学金の種類と基準
冒頭で書いたとおり、貸与奨学金は無利息奨学金と利息付奨学金の2種類あり、それぞれ「学力基準」と「家計基準」があります。
学力基準 | 家計基準 | |
---|---|---|
無利息奨学金 | 申込時までの高校等の成績の平均が5段階評価で3.5以上 | 家計の年収747万円以下 |
利息付奨学金 | 次のいずれかに該当すること ①申込時までの高校時の成績が学校の平均水準以上であること ②特定の分野において特に優れた資質能力を有すると認められること ③学修意欲があり学業を確実に修了できる見込みがあると認められること |
家計の年収1,100万円以下 |
※家計基準は4人世帯の場合の目安です。
利息付奨学金の利率は
在学中は無利息
利率固定方式:年0.156%、利率見直し方式:年0.004%(2019年12月末)
となっています。
当然かもしれませんが、無利息で借りられるほうが定量的な学力基準が求められるので、厳しいですね。
家計の収入も低めな基準になっています。
利息付のほうはやや抽象的な基準になっているので、借りやすいように思います。
利率は低めの良心的な数字なので、安心感が高いですね。
毎月借りられる金額
無利息奨学金
次に、無利息奨学金の毎月借りられる最高金額です。
国公立と私立、自宅通学と自宅外通学によって毎月借りられる最高限度額が異なります。
1.大学
自宅通学の 最高月額 |
自宅外通学の 最高月額 |
|
---|---|---|
国公立 | 45,000円 | 51,000円 |
私立 | 54,000円 | 64,000円 |
自宅通学と自宅外通学の差額が6,000円~10,000円です。
意外に差が小さく、自宅外通学をする方の負担が大きく感じそうです。
自宅外通学の最高月額では自己負担で必要なお金が多そうです。
2.短期大学
自宅通学の 最高月額 |
自宅外通学の 最高月額 |
|
---|---|---|
国公立 | 45,000円 | 51,000円 |
私立 | 53,000円 | 60,000円 |
3.大学院
貸与月額 | |
---|---|
修士課程相当 | 88,000円 |
博士課程相当 | 122,000円 |
4.高等専門学校
自宅通学の最高月額 | 自宅外通学の最高月額 | |
---|---|---|
国公立 本科1~3年生 |
21,000円 | 22,500円 |
国公立 本科4・5年生、専攻科 |
45,000円 | 51,000円 |
私立 本科1~3年生 |
32,000円 | 35,000円 |
私立 本科4・5年生、専攻科 |
53,000円 | 60,000円 |
5.専修学校(専門課程)
自宅通学の 最高月額 |
自宅外通学の 最高月額 |
|
---|---|---|
国公立 | 45,000円 | 51,000円 |
私立 | 53,000円 | 60,000円 |
利息付奨学金
利息付奨学金の毎月借りられる金額は無利息奨学金と比較して多くなっています。
1.大学
- 毎月借りられる金額は20,000円~120,000円(10,000円刻み)
※私立大学 医・歯学課程で120,000円を選択した場合、40,000円の増額可
※私立大学 薬・獣医学課程で120,000円を選択した場合、20,000円の増額可
2.短期大学
- 毎月借りられる金額は20,000円~120,000円(10,000円刻み)
3.大学院
- 毎月借りられる金額は50,000円、80,000円、100,000円、130,000円または150,000円
※法科大学院の法学を履修する過程の場合、150,000円に40,000円または70,000円の増額可
4.高等専門学校
(本科1~3年生)利息付奨学金は対象外
(本科4,5年生・専攻科)毎月借りられる金額は20,000円~120,000円(10,000円刻み)
5.専修学校(専門課程)
- 毎月借りられる金額は20,000円~120,000円(10,000円刻み)
給付奨学金と無利息奨学金の併用
ここから給付奨学金と無利息奨学金の併用について書きます。
まずは新制度の給付奨学金の支給月額は次のとおりです。
給付奨学金は、進学先と通学方法によって異なります。
区分 | 自宅通学 | 自宅外通学 |
---|---|---|
大学・短期大学・専門学校 国公立 |
29,200円(33,300円) | 66,700円 |
大学・短期大学・専門学校 私立 |
38,300円(42,500円) | 75,800円 |
高等専門学校 国公立 |
17,500円(25,800円) | 34,200円 |
高等専門学校 私立 |
26,700円(35,000円) | 43,300円 |
生活保護世帯で自宅から通学する人及び児童養護施設から通学する人は、カッコ内の金額となります。
給付奨学金の支給条件や支給額について、詳しくはこちらを是非ご確認ください。
給付奨学金は貸与奨学金と併用することが出来ますが、無利息奨学金との併用だと調整があるので注意が必要です。
給付奨学金と利息付奨学金の併用には制限はありません。
文部科学省の高等教育の修学支援新制度に係る質問と回答(Q&A)によると、下図のように世帯年収などによって利用できる無利息奨学金が細分化されています。
数字が小さく見にくくて申し訳ございません(汗)
ここから、進学先ごと(大学に通う場合、短大に通う場合、高等専門学校に通う場合、専門学校に通う場合)に、給付奨学金で支援された場合に調整される無利息奨学金を書きます。
それぞれの進学先ごとに、1.非課税世帯(世帯年収の目安約270万円以下)、2.非課税世帯に準ずる世帯(世帯年収の目安約270万円~300万円)、3.非課税世帯に準ずる世帯(世帯年収の目安約300万円~380万円)の3区分で説明します。
進学先と、世帯の年収によって無利息奨学金の調整額が異なります。
大学に通う場合
- 非課税世帯(世帯年収の目安約270万円以下)の場合、授業料減免・給付奨学金が満額支援されるので、無利息奨学金は利用できません。
非課税世帯に準ずる世帯(世帯年収の目安約270万円~300万円)の場合、授業料減免・給付奨学金は2/3支援となりますが、無利息奨学金は利用できません。
非課税世帯に準ずる世帯(世帯年収の目安約300万円~380万円)の場合、授業料減免・給付奨学金は1/3支援となりますが、無利息奨学金は次のとおり13,800円~21,700円の範囲で利用できます。
授業料減免額 | 給付奨学金額 | 合計 | 無利息奨学金利用可能額 | |
---|---|---|---|---|
国公立 自宅通学 |
14,900円 | 9,800円 | 24,700円 | 20,300円 |
国公立 自宅外通学 |
14,900円 | 22,300円 | 37,200円 | 13,800円 |
私立 自宅通学 |
19,500円 | 12,800円 | 32,300円 | 21,700円 |
私立 自宅外通学 |
19,500円 | 25,300円 | 44,800円 | 19,200円 |
※毎月の金額です。
※世帯年収は、両親・本人・中学生の家族4人世帯の場合の目安です。
短大に通う場合
- 非課税世帯(世帯年収の目安約270万円以下)の場合、授業料減免・給付奨学金が満額支援されるので、無利息奨学金は利用できません。
非課税世帯に準ずる世帯(世帯年収の目安約270万円~300万円)の場合、授業料減免・給付奨学金は2/3支援となりますが、国公立で自宅通学の場合に無利息奨学金は3,800円利用できます。それ以外は、無利息奨学金は利用できません。
非課税世帯に準ずる世帯(世帯年収の目安約300万円~380万円)の場合、授業料減免・給付奨学金は1/3支援となりますが、無利息奨学金は次のとおり17,400円~24,300円の範囲で利用できます。
授業料減免額 | 給付奨学金額 | 合計 | 無利息奨学金利用可能額 | |
---|---|---|---|---|
国公立 自宅通学 |
10,900円 | 9,800円 | 20,700円 | 24,300円 |
国公立 自宅外通学 |
10,900円 | 22,300円 | 33,200円 | 17,800円 |
私立 自宅通学 |
17,300円 | 12,800円 | 30,100円 | 22,900円 |
私立 自宅外通学 |
17,300円 | 25,300円 | 42,600円 | 17,400円 |
高等専門学校に通う場合
- 非課税世帯(世帯年収の目安約270万円以下)の場合、授業料減免・給付奨学金が満額支援されますが、国公立で自宅通学の場合に無利息奨学金は7,900円利用できます。それ以外は、無利息奨学金は利用できません。
非課税世帯に準ずる世帯(世帯年収の目安約270万円~300万円)の場合、授業料減免・給付奨学金は2/3支援となりますが、①国公立で自宅通学の場合に20,200円、②国公立で自宅外通学の場合に15,100円、無利息奨学金は利用できます。それ以外は、無利息奨学金は利用できません。
非課税世帯に準ずる世帯(世帯年収の目安約300万円~380万円)の場合、授業料減免・給付奨学金は1/3支援となりますが、無利息奨学金は次のとおり24,600円~33,000円の範囲で利用できます。
授業料減免額 | 給付奨学金額 | 合計 | 無利息奨学金利用可能額 | |
---|---|---|---|---|
国公立 自宅通学 |
6,600円 | 5,900円 | 12,500円 | 32,500円 |
国公立 自宅外通学 |
6,600円 | 11,400円 | 18,000円 | 33,000円 |
私立 自宅通学 |
19,500円 | 8,900円 | 28,400円 | 24,600円 |
私立 自宅外通学 |
19,500円 | 14,500円 | 34,000円 | 26,000円 |
専門学校に通う場合
- 非課税世帯(世帯年収の目安約270万円以下)の場合、授業料減免・給付奨学金が満額支援されますが、国公立で自宅通学の場合に無利息奨学金は1,900円利用できます。それ以外は、無利息奨学金は利用できません。
非課税世帯に準ずる世帯(世帯年収の目安約270万円~300万円)の場合、授業料減免・給付奨学金は2/3支援となりますが、国公立で自宅通学の場合に無利息奨学金は16,200円利用できます。それ以外は、無利息奨学金は利用できません。
非課税世帯に準ずる世帯(世帯年収の目安約300万円~380万円)の場合、授業料減免・給付奨学金は1/3支援となりますが、無利息奨学金は次のとおり18,300円~30,500円の範囲で利用できます。
授業料減免額 | 給付奨学金額 | 合計 | 無利息奨学金利用可能額 | |
---|---|---|---|---|
国公立 自宅通学 |
4,700円 | 9,800円 | 14,500円 | 30,500円 |
国公立 自宅外通学 |
4,700円 | 22,300円 | 27,000円 | 24,000円 |
私立 自宅通学 |
16,400円 | 12,800円 | 29,200円 | 23,800円 |
私立 自宅外通学 |
16,400円 | 25,300円 | 41,700円 | 18,300円 |
このように世帯年収、国公立・私立、自宅・自宅外通学、によって無利息奨学金を利用できる金額が異なります。
利息付奨学金であれば、授業料減免・給付奨学金を受けても利用可能額に制限はないです。
まとめ
いかがでしたか。
新制度の給付奨学金と無利息奨学金の併用について解説しました。
無利息奨学金を受けるには学力基準と家計基準がある。
その基準を満たしたうえで、進学先と通学方法によって受けられる金額が異なる。
例えば大学に通う場合だと、無利息奨学金の最高月額は45,000円~64,000円になる。
給付奨学金の支援を受けると、世帯の年収が380万円以下の場合、進学先と通学方法によっては無利息奨学金が調整される
自分は何となく私立大学理系学部に進学した結果、就職先は大学で学んだことと無関係な金融機関となりました。
奨学金を利用することでご両親の負担は少しでも軽くなります。
しかし返済するのは学生自身になりますので、将来の自分を見据えた大学選びをすることをお勧めします。
また、大学進学に向けた教育費は早めに準備したほうが良いでしょう。
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進学する前に将来の自分をイメージすることが大切だね
奨学金を返済するのは学生自身なので、有意義な学生生活を送ってもらいたいです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。